平成十八年十一月花形歌舞伎@新橋演舞場

松緑海老蔵菊之助*1や松也などまで揃い踏みで、正に花形歌舞伎。加えて芝雀さんや左團次さんといった、見応えありの役者もいる。演目も3人の魅力が活きるものばかり。コリャ売れるなと思ったけれど、会員割引公演取れてよかった。本当は夜の部の船弁慶義経千本桜も見たかったんだけれど、予定が合わず。まあいいか。個人的には左團次さんの日本駄右衛門に注目。

番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき) 一幕二場

コレもひとつの純愛ストーリーかな。最初はお菊の愚かさにムカついてイラッとなる。もっとしたたかになれんもんかいね。でもそれも純愛故?播磨がお菊を許す姿から、本当にお菊を可愛がってるんだなーてのがひしひし。実はわざとやっちゃったのよてバレてからの播磨がもう見物。「疑いは晴れても無念は晴れぬ」てね。頑としてお菊を許そうとしない播磨、お菊も覚悟を決めて播磨の手にかかろうと腹をくくる。好きならいーじゃんてわけには行かないのが、播磨の漢(おとこ)たる所以か。お菊を手にかけ、晴らしようのない気分のところへまた騒ぎ。長物振り回してドンと勇ましく庭へ降りる姿がジン響いた。伯母上に説教されたばかりでも、もうオリャ暴れるしかねーんだよと荒ぶる様は、思わず涙だね。いやお見事。

歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)

ようやく見れましたよ海老蔵弁慶。新之助の頃に何かを見たけど、正に荒事ってものをみたかったんだよね。弁慶もいいけど菊之助の富樫もまたいーんだ。息を飲むようなカルトQ大会。二人の間に流れる空気の緊張感が凄いのなんのって。弁慶が豪快に酒をあおれば思わず会場から笑いが起きるも、終始ピリピリとした緊張感が満ちてた。義経を想うあまりの弁慶の振る舞いを見て、富樫もついに流されてしまうとか、義経の不憫な身の上を想って涙する弁慶とか、荒事とはいえども人情話だよな〜。ラスト飛び六方では会場が花道に釘付け。2階席だと花道半分位までしか視界に入らないから、揚幕まで見れないんだよね、残念。久々に義経記読みたくなった。義経は牛若丸だったり九郎判官だったりいろいろ呼ばれてるけれど、個人的には遮那王って響きが好き。

弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)浜松屋見世先より稲瀬川勢揃いまで 一幕二場

何年ぶりだろう、菊之助の弁天小僧。世話物だけど豪快さがあって楽しいんだよね。弁天小僧って凄く可愛いのに凄く男前ってイメージ。バレてからの居直りさ加減なんか、気風のよさが気持ちいい。容姿ゆえのコンプレックスから強がってるのかとも思ったけど、その振る舞いを見てると根っからこーいうヤツなんだろうなってのがわかる。でもカッコいいじゃない。左團次さんの日本駄右衛門はさすがの貫禄。菊之助松緑も、浜松屋相手にこれでもかぁこれでもかぁと難癖つけてぼったくりまくるのが気持ちいいったら。白波五人男は揃って気のいい男前な奴らなのかも知れんけど、実際は根っからの悪党。ワルですよワル。そして頭がいい。親分の力量が測れるってもんだ。ストーリーも面白いけど見た目の美しさってもの面白いよね。本当に錦絵のよう。

*1:いわゆるちょっと前までの「平成の三之助」