毬谷友子・一人語り「弥々」@1010ミニシアター

本日2本立て。先にライブの予定が入っていたが、間に合うし気分的にもOKな取り合わせだろうと、予定を入れちゃった。好きな女優さんの一人、毬谷友子女史。映像で見ても、この人はなんとも言えない独特の不思議な雰囲気がある。これはナマで見るとどうなるんだろうと、以前から大変興味があった。
で実際は、コレがまたどエライ舞台だった。見応え十分。久々に化け物級の役者を見た。簡単に言ってしまえば、一人の女性を16歳から70歳超までたった一人で演じるというもの。その他に娘役や相手役の男性なども一人で表現。確かにその演じ分けが凄いんだが、そんな簡単な言葉で片付けられるものではない。巧く言い表せないが、無理に言葉で説明するもんでもないか、あれはあの場であの空気でナマで感じないと。もう何度も再演している彼女のライフワークのような作品らしいが、確かに納得。そしてこれからも更に深く、進化することが予想される舞台。
父親に振り回され、「栄蔵坊」「静吉」2人の男性の間で揺れて振り回され、堕ちるところまで堕ちてもそれでもとことん自由に生きた、「弥々」はそんな女性かなと印象を持った。最初はお嬢っぽい可愛らしい女の子なのかと思えば、意外に口が汚くしたたかで、その場その場で一人の人間からさまざまな面が見えてくる。途中20代から40代へ、40代から70代へと、20年も30年も簡単にすっ飛ばすので、その間のことは説明でしかわからないが、ビジュアルも中身も確かに20年分・30年分年をとっている。女郎となった40代の「弥々」が、僧侶となった「良寛(栄蔵)」に久々に出会って、いきなり心根を入れ替えてまっとうな仕事をするというのは、都合がいいのではと若干思ってしまった。それ程彼女にとって「栄蔵坊」が大事だったのか、本当は「静吉」よりも惚れてたのかと言ってしまえば、身もフタもないのかも知れないけれど。それでも「本当は栄蔵坊が好きだった。清吉を選んだのは間違い」と言ってしまえる根性が、これまたしたたかでしたたかで。でもそれがその時の彼女の本音であって、あくまでも飾り気無く正直でいる姿から、強さも弱さも感じる。本当の本当の最後には、彼女は「栄蔵坊」に心底やられてしまった感じで、本当は宛先が違う歌を受け取って、間違いだと知らずに悦び、歌を詠み続ける姿は圧巻。涙なしではいられない。
テレビなどで見た不思議な雰囲気の毬谷さんではなく、正に血の通った現実味溢れる人間がそこにいた。その存在感が凄い。ちなみに原作は毬谷さんの実父・矢代静一氏によるもの。いやはや本当に大変素晴らしいお芝居でござんした。感服。