上妻宏光コンサート「音絵巻Ⅱ」@東京交際フォーラム ホールC

ボーダーレスにコラボレーションして描く、和のエンタテイメント

以前から一度ナマで聴いてみたいと思っていた上妻氏の津軽三味線。週末でスケジュール的にもOKなチャンスに飛びついた。近頃では津軽三味線奏者もそれぞれ面白い活動をしていて、結構話題になっているもんだ。よく聞く名前だと吉田兄弟とか木下伸市氏とか、勿論大御所(?)高橋竹山氏も。どなたもいいアーティストだけれど以前、吉田×2+上妻+木下の4名が出演したNHKの公開収録コンサートか何かをテレビで見た際、上妻氏の音が一番自分好みで印象的だった。上手い下手の問題ではなく、あくまで好みの問題。機会があれば、他のアーティストの演奏もナマで聞いてみたいものである。そういえば、気付いたら木下氏は「木乃下真市」となってたっけ。最初改名した名前を見た時は同一人物か確証がなかったもんだから、結構戸惑ったものである。
客層はかなりバラバラ、若干女性寄りだが老若男女が勢ぞろい。外国人客もいたりして、注目度は思ったよりも高いんだな〜と。どうもトラブルがあったらしく、とりあえずロビー開場するものの、本開場がかなり遅れて結局開演も20分位は遅れた。別にいーけど、ロビーに人が溢れかえってるのに規制もしないで入れるだけ入れて、何の説明もなくただ「お待ち下さい」しか言わず、開場後にせめて開演予定時刻くらいは言って欲しかった。「6時だ!」ってんで慌てて席について、延々開演を待っていた人もいたのでは?どうせ遅れると思ってオリャぁロビーで茶ぁしてたけどさ。
今回はビッグバンド形式でかなり派手なステージング。上妻氏の他に三味線×2+B+Key+ Sax×3+Dr+和太鼓。曲によっては和太鼓を2人がかりで叩くこともあれば、サックスをフルートに持ち替えたり、女性コーラスが2人入ったり、能装束で演舞なんてのもあった。音は全てマイクを通してだったけど、こういう場合生音とスピーカーの音の両方が聞こえて気持ち悪いことがあるが、今回はそういうストレスはあまり。下手寄りの席だったけど、音が左に集中し過ぎることもなかったなぁ。たまに上手寄りの三味線が聞こえなかったこともあったけど、贅沢は言わない。今回1階席だったけど、こういう大所帯のステージだと上から見た方が面白かったりするんだよね。まいっか。
オリジナルやら古典やら民謡やら「林檎追分」なんてのもあったりして、バラエティに富んだ曲目をビッグバンドへアレンジ。爆音ジャズテイストもあり、繊細なしっとり系もありなアレンジ。こういう場合、今回はセンターが三味線だが、これが例えばギターやらペットやらサックスだったらどうなの?ってことになる。違う楽器でも同じアレンジで出来ちゃうんじゃない?という疑問が浮かぶ。が、その辺はさすがにプロなので、このメンツでしか出来ないサウンドを作ってるという感じがした。あとはメインの上妻氏のパーソナリティがどんだけ引き立てられるかで、このバンドでのオリジナルな色が出てくるもの。
完全生音ではないから、三味線奏者・上妻宏光としての魅力(音色とかスキルとか)は伝わりづらいものがあったかも知れないが、かなり聴き応えのあるライブだったなぁ。上妻氏の三味線云々よりも、バンド全体としての音楽に面白味を感じた。といいつつ、やっぱり主役に注目してたけど。
この人って音以外の部分はよく知らなかったから、MCとか結構喋るのが意外だった。まあ、ソロでもう何年もライブやってるから、そりゃMCとかのサービスも慣れてくるだろう。最近こういうMCもちゃんと入れて曲紹介もするってコンサートがご無沙汰なので、なんか新鮮。あ、2月に竹善さんのコンサート行ったか。でもあれは喋りすぎ、楽しいけどさ。
時折演奏しながら調弦をするという器用なことをやっていた。他の弦楽器よりもずれやすいのか?それとも音にこだわりがあるのか?いずれにせよ、演奏しながらズレを感じて、その場その場で修正・確認をしながら、それでも演奏は続いてるってことが凄い。多くのアーティストは曲の合間にチョイチョイっと直して、はいじゃあ次いきますってなるもんだけどねぇ。まあ楽器によって、演奏中にいじれるものといじれないものってのもあるけどさ。MCの中で、三味線以外にピアノもいいしチェロもやりたいし、サポートメンバーを見てるとサックスもいいなぁなんて言ってたっけ。三味線は音の長短や和音・単音など、自由度がどうしても限られてしまうからねぇと、自分の楽器の短所まで明かして。確かに三味線は音の寿命が短い。ただこうして実際に聞くと、表現力はかなり豊富な楽器だと思う。メロディからハーモニー、リズムまで同時に奏でられる楽器という印象を受けた。まあ、プレイヤーにもよるだろうけど、少なくとも上妻氏の音からはひとつの楽器から奏でている音とは思えない響きを感じた。今度は完全アンプラグドの「生一丁!」も聴いてみたいもんだね。ちなみに個人的には音の自由度が一番高いのはバイオリン関係だと思う。高低・長短・強弱・和音単、どれも自由が利くのでは?管楽器もいい線行くけど、音の長さには人間の限界があるしねぇ。まあ鼻から吸って口で吹くという技を身に付けられればいいのだが。(実際出来る人いるらしいよ)