阿佐ヶ谷スパイダース「桜飛沫(さくらしぶき)」@世田谷パブリックシアター

まずタイトル「桜吹雪」ではなく「桜飛沫」。これだけでもう血の匂いがしてくる。今回もドロっとした感じの長塚ワールドが展開されるのか?
2部構成で1幕2幕と主役が違うけれど登場人物はかぶっていて、最後に繋がるストーリー。なかなか面白いお話だったと思います。何箇所か「これはちょっとなぁ」と演出に疑問を抱く箇所もあったけど、何より役者の演技が○で存分に楽しめました。
今回は特に女優陣の働きに拍手。猫背椿嬢の「ちょっと腐った」加減とか、峯村リエ嬢の「しっかりした気違い」っぷりはスバラシイ。水野美紀嬢が産婆経験からの恐怖・苦悩を語るシーンはゾクゾクして見入ったね。男性陣は2幕で山内僧正・中山祐一朗両氏のやり取りを笑ってくれって感じか。あとはまあ山本亨氏、相変わらずカッコいいなと。それから他の役者さんも当然いいですね。
1幕「蟒蛇如(うわばみのごとく)」では所々シーンの移り変わりで、照明と音によってなんとなく蛇をイメージさせて、村が蛇に守られているようで、それでいて飲み込まれている感じという想像力をかき立てられた。それがワクワクゾクゾクしたもんだが、ラストに飲み込まれる様をビジュアル化してしまったことで、ここまで培ってきた想像が全て吹っ飛んでしまった。ぬぬぬ、客に想像させるって表現だけでは物足りなかったのだろうか。
2幕「桜飛沫(さくらしぶき)」では、村が生きているようで実はもう死んでしまっているのではないかという疑問が湧いた。気狂いの「グズ」が目に留まるが、果たして狂っているのはどちらなの!?って感じ。案の定ラストではその辺が描かれていたね。「もらい泣き」にもグッと来たが、やはりラストの「バイバイ」が一番の聞かせる台詞。思わずホロリ。が、問題はその後。佐久間と徳市がついに相対した張り詰めた空気の中に、舞台の両サイドから大量の桜吹雪。綺麗なんだけどさ、ちょっと派手過ぎないか?色濃いいし。まあ「桜飛沫」ってことで血を含んだ感じと思えばいいのかも知れないけど、桜っていうからにはもうちょっとほんのりしたピンクが綺麗だぞ。あと吹き出し方が勢いありすぎて、吹き出す音が気になった。しょーがないことなのかも知れないけれどね。
1幕も2幕もワクワクゾクゾク気分盛り上げて見てた分、ラストのちょっとしたことが大きな落とし穴になってしまったような。ま、あくまで個人的な意見であって、作品としては○でしょうね。