「通し狂言『児雷也豪傑譚話(じらいやごうけつものがたり)』」尾上菊之助宙乗り相勤め申し候@新橋演舞場



なんか久々に歌舞伎を観たくなった。相変わらずチケットは高いけれど、会員特典で1等席が随分安く手に入るとのこと。チラシを見て出演者にもお話にも興味を惹かれて、試験前の息抜きとか何とか訳のわからない理由をつけて、久しぶりに演舞場へ。
2階席の最前列通路横。さすがに花道の揚幕付近は無理だけど、七三辺りはバッチリだ。はっきり言って超良席。ラッキー!
尾上松緑・坂東亀治郎尾上菊之助といった若手人気役者の主演で、尾上菊五郎が演出。古典とはいえ、宙乗りやだんまりなど凝った演出がてんこ盛りの上コントも交えつつ、今様につくったんじゃないかと思わせるほど、派手な舞台。コントはどうかと思ったけれど、客を飽きさせない為や、伝統芸能から足が遠のいている現代人に少しでもとっつきやすくする為だろうか。まあ、所詮歌舞伎って元々は庶民の娯楽なんだから、笑いがあって当然だし、古典に執着しないで現代にあわせたアドリブがあったって勿論OKだ。最近梨園っていうと、中村屋さんとか成田屋さんとか高麗屋さんが世間の話題の中心だが、音羽屋さんも頑張っているんだぞというのが、嬉しい限りである。
物語の発端部分のお話がひとしきり展開されたところで雷丸の夢醒め、菊之助登場。久々に見たけれどやはし瑞々しい。
妖かしが登場するので、スッポンは当然のことスモークがんがん使って、派手はでハデ。黒御簾音楽もドカドカ打ち鳴らして賑やか。通常では使わない楽器もひょっとしたら使ってたかも。大蛇・蝦蟇・蛞蝓の三すくみは結構見もの。ちゃんと目が赤く光る着ぐるみが迫力もあり、愛らしくもあり、マヌケでもあり。カエル跳びは拍手モノ。人間の姿である三役者(菊之助亀治郎松緑)は、あの着ぐるみに入ったことはあるんかな?もし入ってたら大爆笑だし、入ってないんなら一度入って中の大変さを味わえと言いたいところ。
序幕の大詰めで話題の宙乗り。これは2階席大当たり。1階席にも見えるよう、舞台にスクリーンを出してカメラ映像を映していたけど、やっぱりナマで観んと。役者の仕草・表情までばっちりガン観。鳥に乗って宙に舞い上がる児雷也に思わず興奮。堂々とした表情で宙を舞う児雷也の姿に、まるでこれから更に成長して活躍していくであろう菊之助自身の姿を見るようで、何だか物語とは別の部分でも感動してしまった。
2幕1場ははっきりいって全コント。下座音楽がビバルディの「春」から始まるところからして怪しい気配がしていたが、「ボレロ」にのって奥方と娘が登場すると、場内の興奮は最高潮。菊五郎&松也がやってくれました。あまりの羽目外し加減に、なんか俳優祭を見ている気分だ。そういや菊五郎丈、数年前の俳優祭じゃあガングロヤマンバのコギャルやってたっけ。ナンにでもチャレンジするその心、俳優の鑑か!?松也の生写真が売り切れててちょっとあきれつつ、でも気持ちはわかるかも。ホント可愛いかったし、人に見せて「最近の歌舞伎ってこんな感じ」と話のネタにもなる。他にもヒロシネタや「残念!」とギター侍バリにぶった切ったり、メルアドを教えてとナンパしたり「○○.com!」とさりげなく演舞場のホームページをアピールしたりと、ひたすらコントに徹していた。
巫女姿に扮した菊之助女形を見たいものだが、どうしても隣でやっている「ヨガのお稽古」に目がいってしまう。あの横で素知らぬ顔で演技をする菊之助丈、頑張っていますね。
割引券を持っていたので、イヤホンガイドを久々に利用してみた。確かにいろいろ教えてくれるのはありがたく、より物語がわかりやすいが、ちょっと邪魔だな〜と感じてしまうこともあり。ま、便利なんだけれどね。
勅使に扮した児雷也を怪しんで、浪切の剣を廻っての剣問答。3人が徐々に興奮して繰り広げられる言葉による白熱バトルに思わず身を乗り出すも、バレた時の児雷也のリアクションに「ベター・・・」と言ってしまってはダメ?だってさぁ、自身満々で乗り込んできてバレたら取り乱すって、児雷也ちょっと器が小さいのでは?バレたらバレたで開き直る位のデカさを期待していたのになぁ。
終幕では箱根の湯治場で痛々しい人情話。八幡宮といい箱根といい、ご当地ネタにちょっと親近感。ゲスト的な中村芝雀丈が舞台に華を添えて惚れ惚れ、と同時に菖蒲が弟の為に自ら命を絶つ場面では、お約束の展開なのかも知れないけれどかなりじーんとなってしまった。
大詰めの地獄谷はこれまた派手ハデ。舞台後方には竹本長唄三味線取り混ぜて、鳴り物連中がずらり圧巻。真っ赤な照明や火の粉が吹き上がるセット、10名以上の火の粉四天が大暴れして、思わず「ん?新感線!?」と勘違いしそうなほど。派手に盛り上げればいいってもんじゃねぇけど、ま面白いからよしとする。
児雷也綱手大蛇丸それぞれの立回り。長物や二本使いとかなり派手で難易度高そうな殺陣で、今までこの3人の殺陣はあまり見たことなかったから、結構驚き。
花道で繰り広げられる児雷也vs大蛇丸のガチンコバトルを、これまたガン観。なかなかの迫力でウヒョーとなるが、そのままの勢いで物語までもがラストまで突っ走ってしまっていた。雪の中で咲く桜もなしにいつの間にか「浪切の剣(=ライトセーバー・笑)」手に入れてるし、剣の力で大蛇丸から邪心が抜けてみんなで大円談というのもいかがなものかと思ったが、そこはそれ、古典だからやっぱり勧善懲悪が基本だし、終わりよければ全てよしってことで。それに最後、一瞬にして現れた月と星空が思わず目を奪われる程キレイだったので、まあいいかと。
全体的に菊之助をフューチャーした舞台だったかなぁ。松緑亀治郎はそうでもないのに、菊之助は装いを何度も変えて出ずっぱりだもん。ま、菊五郎劇団の興行ってことだし、宙乗り相勤め公演ってことだし、これでいーのかな。
久々の演舞場だったので、いつの間にか内装変わってリニューアルしてるもんだから、ちょっと驚いた。前よりロビーにゆっくり休める場所があってよいね。
演舞場の売店で売っている組紐ストラップがお気に入りで、すでに何本も代がわりを繰り返してずっと使っているのだが、これが他のどこを探してもない代物。今使っているストラップも大分痛んできたが、次に使う新しいストラップがもう手元にない状態。切れるのも時間の問題なので、ここで買っておかねばと必死こいて探すが、売店も若干模様替えされていて、なかなか見つからない。かなり焦って人ごみを掻き分けると、ようやく見つかり無事ゲット!しかし、なんで他の場所で売ってないんだろうなぁ。演舞場オリジナルって訳じゃないだろうに。まあ、演舞場を訪れた第二の目的達成できたのでかなり満足♪
今日はすごく不思議な体験をした。家から駅に向かう途中、道に何か物体を発見。よくよく見るとカエル。しかもデカい。体長10cm位?足をびょーんと伸ばせば15cm〜20cmくらいあるんじゃないかというサイズのカエル。動いていなかったが潰された形跡もないので、おそらく生きている状態。なんでこんな時期にこんな住宅街のど真ん中にカエル?と怪しんだが、ちょっかいをかける気もなく、いきなり動くなよ〜とちょっとビビリながら横を通り過ぎた。そんなことすっかり頭の隅に追いやって芝居を観ていたら、児雷也が変化した蝦蟇を見てビックリ!?道で出会ったカエルにそっくり〜!!色も模様もマジで同じ。なんでぇ〜!?しかし出合ったのがカエルでまだよかったのか?蛇には遭遇したくないもんなぁ・・・。