「天保十二年のシェイクスピア」@シアターコクーン

こちらも昨日同様超豪華な役者陣。以前いのうえひでのり版を見たのでストーリーは大体知っているものの、これを蜷川幸雄氏が演出するとどうなるのだろうと興味が湧き、べらぼうに高いチケット代に悩むが観なければ結局後悔すると思って、行くことを決心す。友人A木もチケット代に怯まず喰い付いてきたので、連チャンで豪華だ〜!とまたも鼻息荒くして出かける。
洋と和をごちゃ混ぜにしたような変な舞台。「天保」で「シェイクスピア」って考えると納得だけれど、最初はかなり面食らった。開演前にはシェイクスピアっぽい衣装の人が舞台上をウロウロ。その中に明らかに大道具のスタッフっぽい人がセットをいじっていたりして、ナンじゃこりゃって感じ。
いざ開演となると客席からわらわらと登場して「もしもシェイクスピアがいなかったら〜」と歌いまくってる。果ては舞台にでーんと立っていた2本の柱を切り倒すし。もう驚きの連発。「シェイクスピアがいなかったら」シリーズは、出版社やプロデューサーが困っただの、数学者が文学者になってたかもなど「ふーんなるほど」ってことがいろいろ並べられてたけれど、「バーンスタイン(ジョン・ウィリアムズだったか?うろ覚え・・・)も作曲できなかっただろう」ってどうだろう?「『トゥナ〜イト、トゥナ〜イト♪』もなかっただろう〜」ってウエストサイドの「TONIGHIT」を歌っていってたけど、こんなところまでシェイクスピアの影響ってあるのかな。不思議。
全体的に歌が多くてなんかミュージカル仕立てな感じ。もともと井上ひさし氏の原作にも歌があるんだっけ?舞台の上下に電光掲示板があって、歌詞を映してくれるのはいいんだけれど、そっちに気をとられて舞台の方が疎かになってしまうのね。電光掲示板には各場面のタイトルも表示されてて、「大事の前の障子」とか「陰謀は女の陰部から生まれる」とか、駄洒落か!?といいたくなるような言葉遊びが含まれいたりして、これがまた結構面白かった。これも原作にあったんかな?
まともにやったら4時間を越えるという戯曲を、今回は休憩込みで4時間位。いのうえひでのり版では1/4位はカットしたというが、今回もやはりカットしたのだろうか。いのうえ版でカットした部分を今回はちゃんとやっているシーンとかもあったなぁ。清滝村を廻る三世次の物語にはあんまり関係ない、清滝村のサイドストーリー的な佐吉と浮船太夫のお話。本筋とは関係ないけれど、「子を思う親の想いが人を死なせてしまった」というお光たちとは逆の物語が同じ村であったということや、棺桶を作る立場の佐吉が結局自分も棺桶に入る事になってしまったという悲劇というか皮肉なことを、表現しているってのが面白いのかも。あとは、シェイクスピア作品を全部入れるために、このエピソードが必要なのかもしれないし、ってシェイクスピアのどの作品から来ているのかはわからないけれど。
王次の「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。」っていう件。(「ハムレット」だっけ?)今まで上演されたさまざまなケースを引き合いに出して、同じ台詞でも翻訳とか解釈によってこれだけ違うのかっていうほど、いくつものパターンを続けて演じてた。すごいねぇ、ここに出しただけで何十ってパターンがあるってことは、今までどれだけ日本で上演されてきたんだろう。一番古いのは何時って言ってたっけ?そしてその度に同じ台本でも捕らえ方ってのが違うんだね。オープニングで「シェイクスピアがいなかったら」云々っていうのはあながち嘘じゃないほど、シェイクスピアが残した影響ってのはデカいのか。
役者は何方も力量がある人たちだから、特に言うことはないね。白石加代子女史は相変わらずの怪優っぷり。腰を曲げているのが自然に見えるのがスゴイ。でもたまにはああいう化け物っぽいんでなくて、普通の人の役とかやっているところを見てみたい。こんなに豪華な役者陣なのに、それぞれの出番はそれほど多くないなんてもったいない気もする。まあ、4時間を越える大作を土曜は2ステって大丈夫かよ!?と思ったけれど、それぞれの出番はそれほど多くないから2ステも可能なのかな〜?出ずっぱりって役者はいないもんね。一番出ているのは、進行役みたいな百姓役の木場勝己氏かなぁ。
ロミジュリの有名な場面をパクったシーンでトラブル発生。なんとバルコニーのカーテンが上がらない。これでは肝心の「おぉロミオ、何故貴方はロミオなの〜?」というよくよく考えればヘンな台詞のアレが出来ないではないか。カーテンの下から殺陣をする役者の足が見え隠れするも、上がりそうで上がらない。はてどーすんだ、と思っていたら、客席後方のPAスペースからスタッフが舞台ですっ飛んできて、舞台を一時中断させた。と思ったら、演出・蜷川幸雄氏本人でした。以外に若い格好ですっ飛んでくるもんだから、スタッフかと思っちゃったよ。他にもスタッフが出てきて、完全に舞台が止まってしまった。何とか対処して、「では○○の所から」という演出の指示で再開。ここまで勢いに乗っていた状態をブツっと止められて、またあそこのテンションまで持ち上げるのは(しかも稽古場でなく客の前で)、結構大変なことじゃないかと心配したが、そこは皆さんさすがプロ。何事も無かったように芝居の世界に入り込む。演技が巧いってだけでなく、こういう精神的な強さや安定感ってのも、プロが必要なものなんだろうな。こういう思いがけないトラブルは、実際にやっている人達にとっては冷や汗ものかも知れないが、観ている側としては何となく得をした気分になる。滅多にないことだから貴重な体験をしたと、何となくレアな気分?
最近コクーンで蜷川作品をやる時、ロビーのカフェで上演作品とのコラボレーションメニューがある場合があるけれど、今回は「天保うどん」。・・・はっきり言って「天保」ってくっついているだけで、作品にうどんは全然関係ないやんけ!でもつい喰いたくなる人間のおバカ心理を巧い具合についているぞ。実際、結構みんな食べてたし。パンフレットは落とし穴って感じ。「9月発売分と10月発売分では内容が違います」だって!9月分は稽古場写真、10月分は舞台写真が掲載されいているとのこと。うわぁ汚ねぇ・・・。9月に見に来た人はパンフレット欲しさに10月も見たいって思うし、10月に来た人は9月の分も欲しいって悔やむんじゃないか?事前にホームページとかで告知してたんかなぁ・・・。ま、別にいーけどね、どうしても両方欲しいとは思わないしぃ〜。
やっぱり今作品もWOWOWで放送。くっそー、以前実家でWOWOW見れた頃は、面白い舞台作品をこんなに放送してなかったのに・・・。時代はCSか?と思ってシアターテレビジョンを入れたら、BSが盛り返してくるとは。なんか悔しいっ!