「まちがいの狂言」@世田谷パブリックシアター

どうも最近は人気のあった舞台の再演というパターンが多い。いや新作もいろいろやっているが、自分が足を運ぶものは結構再演物が多いかなぁと。野村萬斎氏がパブリックシアターの芸術監督に就任されてからもうずいぶん経つが、実際に野村氏がパブリックシアターのステージに立つのは実は初見。本業の狂言は勿論、ストレートプレイや映画などでも活躍している中、本業だけどちょっと変わった作品な「まちがい〜」は、以前見たくて見れなかったものだから実はかなり楽しみにしていた。
会場へ足を運ぶと老若男女と幅広い客層。ロビーや階段の床に花か何かをあしらった文様のステッカーがそこかしこに貼ってある。このステッカー白と黒のシンプルデザインで、ここからもストーリーの「白草・黒草の国」をイメージさせてくれる。客席への扉には紋入りの幕が下がっていたりと、なんだか風情があるね。客席の天井はいつ見ても驚くきれいな青空。不思議だな〜と思ってみていたら、ヘンなもん発見。天井付近に黒い人影みたいなのがいくつかあり。人?と思って見ていても動かないからどうやら人形だったらしい。
と思っていたら、開演少し前にヘンな人影が実体をもって客席のあちこちに現れた。面をつけて全身黒ずくめ。まるでダース・ベイダーのよう。あちこちで「ややこしや〜」と唸りながら、何気に客にちょっかいをかけて遊んでいる。最終的には遊びが過ぎて客から借りた花飾りのついた髪ゴム(?)を使って舞台でみんなで遊び、結局壊した。あれはやってる本人達が一番ビビッたろう。しょーもな。
そんな感じで舞台に全員集合して「ややこしや〜」と謡って踊っているうちに、なんとな〜く始まった。白草・黒草両方の双子を演じるので、どちらの人物か分かるように演出の決まり事がいくつかあった。白草は上手側、黒草は下手側の揚幕から出入りすることになっていた。それから同じシーンで白・黒両方の人物がいる場合は、どちらかは面をかける。そんな感じでどういう状態なのか、この人は誰なのか、といった状況が分かりやすくなっていた。そしてストーリーはホントにもう勘違いと勘違いの連続で、思わずツッコんでやりたくなるくらいすれ違いすれ違い。
歌舞伎や能・狂言をやっている役者達ってのは、ホントに器用だと思う。すごくゆっくりした動きのイメージもあるかもしれないが、身体能力は結構高い方だろう。そして狂言師というのはしなやかで躍動感があると思う。大蔵流茂山家による狂言は以前経験済みだが、和泉流の野村家の作品は実は初めてか?萬斎氏は実に色がある。すごーく渋い色気を出す演技もするが、こういういかにも狂言といったコミカルな作品では実に滑稽な姿を見せてくれる。生まれた時から人生が決まっていて、子供の頃からその道にどっぷり浸かっているからこそ、逆にさまざまな広い場で柔軟に活動できるのかもしれない。それでいて本業も当然しっかりこなしているあたり、好感を持つね。