劇団M.O.P.第41回公演「ズビズビ。」@紀伊國屋ホール



久しぶりM.O.P.。マキノさんのホンや演出もいいけれど、とにかくここは役者がいーんだよな。今回は4本のショートストーリーによるオムニバス。ノリでやったはいいが、実は大変だったとご挨拶のチラシに書いてあったっけ。そりゃそうだっての、マキノさん。
なんでまた「ズビズビ」かってのは見ればわかるとのこと。わからなきゃ隣の人に聞きなさいだって。
お話はどれも楽屋を題材にしたもの。役者にとって本来楽屋ってのは安らぎとかくつろぎの場であると思うけれど、それをステージに組んで芝居でやらせるってのは、くつろぎの場まで仕事にさせるという、ある意味酷なことなんじゃないかと思うのは考えすぎ?
見終わってからわかることだけど、それぞれの話が全く関係ないわけじゃなくて、ちょっとづつ関係性がある。そのつながり方が面白いんだ。時間軸は飛び越えて、楽屋という空間だけを共有してるっていうのかな。その時間のずれも、あからさまにこう違うって見せ付けるんじゃなくて、ちょっとした一言二言で「あ、そういうことか〜」と見ている側にふっと気付かせるような、洒落の利いた表現。
ホンもいいし演出もいいし、それを表現できる役者がいる。こういうところがこの劇団の好きなところ。

ずっと貴方が・・・

小市マンのスターふんぞり返りぶりもいいけど、とにかく必死でそれでいて確実に相手に詰め寄る記者のドリさんがとにかく素晴らしい。オチは「はーん、やっぱりね」と大体わかっていたけれど、更にその先、「ユリさんが亡くなったからじゃ・・・」てオチと、更に更にその先、ン十年後まで続くオチのオチのオチがいいんだ。仇であるはずの相手だけれども、ずっとずっと想っているっていうのは、執念で追いかけていたからか、もしくは仇であることを承知でいても、それほど南大作が魅力ある銀幕役者だったのか。ラスト、花を1本取って鏡に向かって芝居をするシーンはジンとくるね。あの姿を見て、マチネとソワレ、わずかな間で、南の演技がすっかり変わった様を見てみたいと思ったもんだ。これに対して劇評はどう変わったでしょうね〜。

ビッグな男

この話だけ、他の3本との関連性がわからなかった。自分がニブいのか元からなかったのか。他の3本とちょっと毛色も違うしね。ドタバタドタバタ。ミカイチが超おいしすぎ。あの石松っぷりは今作品の中で最高のボケである。ちょいと悩んで爪先立ちなんかもう最高。

ずいぶんな話

自分の現状やこの先のことにちょっとカブッてるので、まざまざと現実を見せ付けれたというか、考えたくもないことを考えさせられた。ただひとつ違う点として、山ちゃんはまだやる気があるということ。仕事に対して意欲的だ。悩みながらもまだまだ十分ガッツいてる。自分にはその辺がチョイなくてねぇ。その情熱がうらやましいとも思うし、もう自分は会社に対してそこまでやってやりたくねーのよ、という反骨精神の葛藤。あぁ、あんな風にサラッと「死んでくれ」と言ってやりたい。白金さんみたいな人がいたら、それはそれで困りモノだろうけど、いたらいたで面白味があるんじゃないかな。たまには「グッジョブ!」してくれそうだし(笑) 1話目とのつながりが爆笑。「左よ、左」この一言だけで、あの二人が過ごしてきた日々が伺えるのが素晴らしい。*1 2話目とはまた違ったバタバタ感が終始繰り広げられて、かなりのスピード感。バックステージってこんな感じなのねーという、妙〜な説得力ある。役者もスタッフも頑張れ〜。

ビタースイーツ

ドリさん・小市マン・ミカイチのガチンコ芝居。見ごたえ十分。危ういような安定感があるような、あったかさとスリルが入り混じったような、3人の微妙なバランスに、ゆっくりとそして確実に心を締め付けられた。それぞれが抱える悩みや苦しみはあれども、仲間といるのが楽しい、お互いにとても大事に想いあってる存在、いつでも一緒に笑っていられる、そんな空気がとても素敵でとても切ない。他の話からこの話へ、それからこの話の中でもポンっと話が飛ぶけど、ちゃんとついていける。時間の経過だけでなく、異空間まできれいに表現してるのがまた、切ないじゃないか。*2ふぅ、すっかりやられましたわ。うるうる。
4つ終わって、ほら「ズビズビ」でしょ。なんのヒネリもなし。まんまやんけ。
そんなんは別にいいとして、カーテンコールではビックバンド生演奏。これかなり練習したんじゃない?そこそこ様になってるよ。ミカイチ、G2モノでギターの次はサックスか。役者てのも大変ね。
派手さはないけどかなりお腹が満たされるお芝居でした。楽しかったです。ごちそうさま。

*1:よーするにシリに敷かれたんだな、大ちゃん

*2:若かりし頃の大ちゃんを見て、ちょっと「蒲田行進曲」を思い出したのはアタクシだけ?