イッセー尾形ひとり芝居「イッセー尾方のとまらない生活スペシャル」@県立青少年センター



以前から是非見たいと思っていたイッセー尾形氏の一人芝居。近場というのも好都合でウキウキして観に行く。
ステージにはひとり芝居ってことでイッセー氏ひとり。ただ、合間のBGMにダブルベースと女性コーラスが2人。上下の花道には、ワークショップ参加者が見学。約1時間半で6つのストーリーが繰り広げられたが、も〜釘付け!面白かった〜!!ずーっと楽しみにしていた期待を裏切ることなく、面白い舞台だった。

仕事に疲れたサラリーマンのオヤジが、同僚2人の板挟みになって更にウンザリする。自分もよくどっちつかずって立場を取ることが多いので人事とは思えないが、オヤジのウンザリ感が面白い。どっちつかずってのもよくないのかもしれんけど、我を通す同僚2人にワガママ言うなよと突っ込みたくなる。新幹線がやっと到着して話はオチるけど、その後車内ではどうなったんだろうね〜。しかし何の出張なんだか不思議でたまらない。チャンピオンが温泉好きだから温泉手配して、チャンピオンを接待した後そのまま連れ帰ってって、・・・ナンなんだ!コレ!?


ピザ屋の店員がとある会社に配達に来て「ヤ〜マダさんいらっしゃいますか〜?」とTPOを考えずに大声で注文した山田さんを探す。これがも〜すんげぇオカシくって。山田氏の同僚に「山田はいない」と言われれば「いない?そりゃオカシイっしょ。ぜって〜ありえねぇ。○○って会社のヤ〜マダさんからシ〜フ〜ドピザの注文あったんスよ。」と畳み掛け、「山田は出かけてる。」と言われれば「い〜ないんじゃなくて留守なんでしょ。だったら最初からそう言ってよ。ちゃ〜んと正しい日本語使ってよ。」とダラダラした口調で説教する。
見た目も話し方もいわゆるだらしな〜い感じの今時の若者で、すーげぇムカつく態度なんだけど、実はヤツが一番理にかなったことを言っているんだよな〜。「留守ならヤ〜マダさんのケータイに電話かけ『ピザが来てる』とか言って下さいっスよ」とか。そもそも喧嘩吹っかけてきたのも最初はサラリーマンの方だし。
「ピザだけ置いていけ」とか「自分が注文したことにして、それの代金払うからとにかく帰れ」とか言われれば、「ヤ〜マダさんからの注文なんッスよ」とか「ヤ〜マダさんのピザなのに勝手に喰っちゃマズいっしょ〜。訴えられますよ?」とかヘンに律儀だったり。黙ってりゃいいのに「あ〜、冷めてきた。冷めたら喰えたもんじゃねッスよ〜。ヤ〜マダさ〜ん。」といちいち人の視界に入ってくる。もし自分の仕事場にこんなん来たら、キレるだろうな〜。
「たかがピザ屋」って謗られれば「そっスよ。たかがピザ屋にマジんなんないで下さいっスよ。」と小馬鹿にして逆撫でする。さんざんピザ屋に突っかかってそれでも相手は引っ込まないから、もうシカトしようぜって背を向けたサラリーマンにこれまたムカつくダメだししたりして、こんなヤツにダメ出しされたくね〜よ、と更に腹が立って面白い。
最終的にはサラリーマン側が「ピザ屋出入り禁止」とかもう支離滅裂なこと言って、何とか店員を締め出そうとするんだけど、「これピザじゃねぇっスよ。・・・・・・・蛍光灯っスよ。」爆!!!ピザ屋の勝ち!!!もーひっくり返ったね、アンタすごいよ。更にはこれに笑ったらしいOLを捕まえて「あ、アンタ今笑ったっしょ、ウケたっしょ!」とどんなこともひとつ残らず全て拾って返す。完全にヤツのペースで「ヤ〜マダさんいらっしゃいますか〜」とひたすら続く。
あ〜、ホントおかしいっっ!そして、どーしても人間見た目で判断しがちなのは仕方ないけど、やっぱ中身見ないといけないんだろうな〜と、ちょっとマジに考えたり。


息子3人娘2人+ジーちゃん連れて海に来た、ビールっ腹のどっかにいそうなフツーっぽくてでもフツーでない結構豪快な感じの親父。とにかく子沢山なのに笑った。5人もいるのかよって思ったところに「じーちゃん!」って(笑)。そして親父のキャラだけでなく、子供の年齢やキャラなんかもちゃんと伝わるのがスゴイと感心。5人も子供がいれば、ただでさえ賑やかでそれぞれ性格も違って子育て大変だろう、な〜んて思っていたら「かぁちゃんは病院だから来れないだろ!」「も〜父ちゃんは男でも女でもどっちでもいい!」って更にもうひとり産まれるんかいって、ツッコミどころも満載。これまたひたすら笑って笑って面白いんだけど、この話のすごいところはラスト。だんだん潮が満ちてきたところで親父が一言「あ、今産まれたな。」すっごいキレイなオチ。すげぇ、この一言でこの話は見事に落ちた。ずーっと笑ってたのに、最後はすごい感心しちゃった。


控え室にいる花嫁さん。そもそも話ごとの着替えをステージでやるってだけでもおかしいのに、人前でいきなりドレスに着替えるってだけで笑いが取れるのがズルイよね。ちゃんとベール被ってブーケ持って。それだけでオカシイのに花嫁が結構いい歳で、招待客に母親と一緒に「ホ〜ント、すみませんねぇ〜」って誤ってんのが面白く、じゃあアンタ一体幾つなのよと期待してたら実は50歳ってもう笑うしかないじゃない。ホントずるいよ。そして面白いよ。
ダンナ予想クイズは「箱根の没落貴族」だのえ〜っとあと2つなんだっけ・・・、忘れたけどとにかく一体どんなダンナだろうと期待してたらフツーの46歳だとか。フツーで数字が好きで虚数素数がどうとかこうとか言って今は時刻表作ってる会社に勤めてて、って全然フツーじゃないニオイを感じさせる。出会いはなんじゃいと思えば、花嫁が勤めてるデパートにダンナがワイシャツ買いに来た時ってなんかフツーかなと思いきや、売り場の裏で「御祝」とか書いてるところに迷い込んできたって、やっぱりフツーじゃねぇよ、とまたツッコんで。そもそも50のオバサンがデパートで働くって何やってんのと思ったら、のしの代筆っても〜オバちゃん色強すぎてフツーありえない。言葉やしぐさひとつとっても、どれもオバちゃん色が出てるのに花嫁、ウエディングドレス。いや、世の中そういう人も実際はいるかもしれないけど、やっぱりフツーには考えられない。
そんなこんなでひとしきり笑って、「そんなわけで引き出物はワイシャツと時刻表」ってオイっ!!!そりゃあんまりだ!!!


寂れた「テーラー○○」の主人と久々の来客のやり取り。そもそもいまどきテーラーってもんがまずオカシイ。さらに主人は挙動不振でとどめは客。病院で余命幾ばくもないと告知されて死装束つくりにきたって、思いっきり引くぞ。それでも笑いがって、でもやっぱり何かシュールな感じ。


寂れたキャバレーにドサ回りに来た売れない歌手のオヤジが歌いまくる。とにかく濃い。なんかルー大柴氏を思い出させる濃さ。歌上手いんだけどオカシイ。最後にはギター引っ張り出して弾き語りをするけど、これがまた歌詞がオカシイ。最後にゃ「♪シャ〜バダバ〜 シャ〜バダバ〜 シャバへ帰りたい〜」ぅわあぁぁぁ、面白いけど引いちゃうよ〜っっ!!でもオカシイよ〜っっ!!!


そんなこんなで1時間半。どのギャグも「え〜っ?」と萎えることなく、思いっきり「オイッ!」ってツッコミたくなるものばかり。ゲラゲラと笑いつつも、勿論イッセー尾方氏の芸達者ぶりもひたすら脱帽。化けるのが上手いっていうより、その場のシチュエーションを表現することに長けているとでもいうのだろうか。イッセー氏が演じる主人公は勿論だが、主人公以外の登場人物がどんな人間かということまではっきりと目に見えるようである。面白いもん見てもうお腹いっぱいです。と思ったら終演後ロビーでサイン会。せっかくなので、と開演前に物販で買ったイッセー氏が書いたイラストの手ぬぐいへサインしてもらった。日ごろからTシャツへのサインはいかがなものかと疑問を抱いているが、手拭いなら余裕でオッケー。これでまたヘンな手拭いコレクションが賑やかになった。ウレシー♪あぁ、ホント楽しかった。ごちそうさまでした。