「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」@PARCO劇場

今月の再演シリーズ第3弾。これはもう演劇っていうよりライブだな。オープニングから客が総立ちでノリノリ。さすがになりきりヘドウィグはいなかったけれど、なんか派手〜な感じの客が多かったように思う。今年はPARCO劇場だけでなく、Zepp Tokyoでも上演することとなった。よりライブ感が強くなるんだろうな。ライブ感覚を楽しみにZeppへ行ってもよかったんだが、いかんせんライブハウスなので劇場とは違って客席に傾斜がない。もし後ろの方だった場合、かなり見づらいのでは?との心配から、PARCOでの観劇を決意。
初演・再演ともに前評判は高かったが、実際に見て納得。三上博史氏のヘドウィグは、もうまさにヘドウィグそのものがそこにいるといっていいものだった。派手な衣装・メイクといった演出によるものが大きいのかと思っていたが、そうではない、三上氏の内面からヘドウィグを感じた。ものすごい存在感でもって、客を圧倒させる。
今回どうやってチケットを取ったか自分でも覚えていないが、かなり前のセンターだった。席にはビニールシートが置かれ「この席は水が飛んでくることがあり・要注意」といったようなことが書かれていた。どういう演出だろうと思い、まさかとは思ったがやっぱりそうだった。三上ヘドウィグがステージから思いっきり水を吹きかけてくる。普段だったら「うへぇ〜」となってしまうが、この際全てを楽しんでやろうとシートで避けることもせず、存分に浴びてやった。しかしトマトはヤバイです。終演後、すかさず鏡でトマトチェックをしたが、無事だった(と思う)。前の方だったので、三上ヘドウィグが近づくたび香水の香りが漂う。やや惜しいなぁと思ったのは、酒の匂いもホントにしたら面白いだろうな〜と思ったこと。しかしまあ、あのステージの真っ最中に本物の酒をかっ喰らう訳にはいかないだろうから、それは無理な話か。
三上氏といえば正統派な俳優のイメージが強いが、そんなもんぶち壊してくれた。歌もかなりイケている。知らなかった。そして本人自体がものすごーくステージを楽しんでいる。かなり自由。バンドのメンバーもよく平気な顔をしていられるもんだと思うくらい、いろいろかましてくれる。まあバンドメンバーも結構いろいろ面白いことやってたかな。やってる本人が満足してないと、客も楽しめないってもんだ。
ナマ演奏が入ると、ステージの臨場感が倍増。耳や目で感じるだけでなく、振動が伝わってくるのがいい。歌の演奏だけでなく効果音の役割もあったりして、芝居の演出としてもバンドが活躍していて面白かった。ヘドウィグがあれだけ自身たっぷりでいられることを羨ましくも思い、反面ものすごく傷ついてそれでも這い上がる姿に、果たして自分はあれだけの傷を負っても前を向いていられるだろうかと、自問自答。ラストにヘドウィグから一転して元恋人のトミーへ。ヘドウィグの部分がものすごく面白かった分、トミーの存在感がそれほど強烈には感じられず。ノーミソにヘドウィグがインプリンティングされてしまった為か?いろいろ考えさせながらも、元気をもらった感じ。ごちそうさま。
おまけ:エミ・エレオノーラ嬢(イツァーク&ピアノ・コーラス)がカッコカワイイ。あのヘドウィグに対して引けを取らず、かといって喧嘩を売るわけでもないが、タメ張ってる感じがイイ。勿論歌も◎。